【書評】同調圧力~日本はなぜ息苦しいのか~

こんにちは。

 

今回は「同調圧力」の要約、感想を書いていきます。では、いきます。

 

同調圧力とは何か?

 

新型コロナウイルスの拡大は、日本および日本人の様々な面をあらわにしたとしています。そしてそれは凶暴で陰湿な形となって、人々を襲っているのです。

 

日本のコロナの感染状況は欧米よりも遙かにマシですが、この理由を尋ねられた麻生財務大臣はこう言ったようです。

 

おたくとは、うちの国とは国民の民度のレベルが違うんだ」と。

 

要は、「お前らより日本人は優れてるんだ」と。海外メディアはこの答えに絶句したそうです。意味不明すぎて。

 

だって、「センター試験なんでこんな高得点とれるの?」って聞いたら、「お前とは才能が違うんだよ、バーカ」って言われるみたいな感じです。

 

さて話を戻しますが、新型コロナウイルス感染状況が、欧米よりもマシな理由の一つとして、著者の鴻上氏と佐藤氏は、「同調圧力」を上げています。

 

同調圧力とは、英語では訳されない、日本人特有と言ってもいい、「「空気に従え」という命令」「「みんな同じに」という命令」のことです。

 

例えば、「自粛をしろ」「飲食店は休業しろ」「遊びに行くな」「でも働け」みたいな空気です。息苦しさを感じながらも、黙って従って居る人も多いですよね。

 

では、この「同調圧力」は一体何が作り出しているのでしょうか?

 

世間とは?

 

日本は「「世間」のルール」が、法律よりも強い傾向にあります。

 

良い例を挙げれば、震災が起きたとき、法が機能しなくなっても、「略奪や暴動を起こしてはならない」「他人に迷惑を掛けてはならない」という「世間のルール」に人々が従ったことで、秩序が作り出されました。

 

しかしこの「世間」こそが、「同調圧力」を作り出していると、著者の2人は言います。

 

しかし、「世間」と「社会」は何が違うのでしょうか?

 

佐藤氏はこれが極めて重要だとしています。

 

「世間」というのは、自分に関係のある人達だけで形成される世界

そして

「社会」というのは、バラバラの個人のあつまり、自分の関係のない人達がいる世界、です。

 

佐藤氏は、「日本人は「世間」に住んでいるけれど、「社会」には住んでいない」と述べているのです。

 

世間の5原則

 

著者の2人は、世間には5つのルールがあるとしています。それは、

・お返しのルール

・身分制のルール

・「みんな一緒」ルール

・排他性のルール

・呪術性のルール

です。

・お返しのルール

お返しのルールとは、もらったら必ずお返ししなければならない、というルールです。「内祝い」「旅行先でのお土産」「お中元」「お歳暮」など、大規模にモノのやりとりをします。

 

これは、ちゃんと「お返し」をしないと人格評価に関わるのです。

 

また、LINEの既読無視が問題視されるのは、「お返しのルール」に深くとらわれているからだとしています。

 

・身分制のルール

 

年上、年下、目上、目下、格上、格下など「身分」がその関係の力学を決めてしまいます。

 

部活で、1歳や2歳しか歳が変わらないのに、先輩、後輩の関係に縛られてしまうのは、この「身分制のルール」があるからなのです。

 

・「みんな一緒」ルール

 

「みんな一緒」、「人間は平等」というルールです。要は、「違う人にならないでね」という同調圧力です。

 

「出る杭は打たれる」という言葉はここから生まれています。

 

また、このルールは、日本には「個人」がいないことを示しています。

 

そもそも「個人」や「社会」という言葉や概念は、明治時代に入ってきた輸入品です。

 

しかし、「個人」の基礎がキリスト教であったために、「世間」で作られている日本では、定着しなかったのです。

 

・排他性のルール

 

「排他性のルール」は仲間はずれをつくるというルールです。

 

「ウチ」をつくるには、「ソト」をつくる必要があります。そこで「仲間はずれ」や「敵」をつくることで、自分たちの「世間」「ウチ」を意識し、強固にしているのです。

 

・呪術性のルール

 

日本人は、迷信・俗信を信じている傾向にあります。

 

例えば、「大安の日に結婚する」「友引の日に葬式はしない」「香典半返し」「恵方巻きを黙って食べる」などなど。

 

しかし、これらは大体企業が行っているビジネスによって作られていることが多いです。

 

バレンタインデーや節分の恵方巻きは、デパートやコンビニが始めたビジネスであることは有名ですが、結婚式や葬式に関わる迷信も、結婚式場や葬式業者がつくっているのです。

 

最近つくられたものであるのに、日本人は「伝統だから」「罰があたるから」と言って信じやすいのです。

 

息苦しさを生み出す「世間」

 

冒頭で新型コロナウイルスの拡大が日本および日本人の様々な面をあらわにし、それが凶暴で陰湿な形となって、人々を襲っていると述べました。

 

というのも、世間が生み出す「同調圧力」の悪い面が、この新型コロナウイルスの拡大によってあぶり出されたのです。

 

佐藤氏は、このコロナの状況を「「戦時」ともいうべき状況にあるように思う」と述べています。

 

メディアが危機を煽って誘導し、「戦争しかない」という開戦論が盛り上がった、戦時中と同じことが起こっています。

 

例えば、感染状況が連日まるで「戦果報告」のように報道され、個人の権利よりも為政者にとって都合の良い国益のみが優先される。

 

マスコミが煽ることによって、相互監視や移動の制限が肯定され、プライバシー権なんて、骨抜きにされる。異論をぶつければ激しいバッシングを受ける。

 

「新しい生活様式」は、「欲しがりません、勝つまでは」のような戦時スローガンと言ってもおかしくない。

 

しかも、コロナの死者の少なさやマスクの機能性などデータなんてどうでもいい。

 

正確な数字も見ずに、観念論ばかりが押しつけられ、それがまるで正義かのように、「生活を変えろ」「我慢しろ」と説教される。

 

これは、「この空気に従え」という同調圧力が異常なまでに働いているからなのです。

 

そして、この同調圧力は、「みんな一緒主義」の世間から生み出されています。

 

強制力のない単なる「要請」に対して、みんな「自粛」ができたのは、同調圧力があったからです。

 

また、「排他性のルール」によって、外出したり、営業したりしている他人を、「自粛警察」が粛正してくれるので、政府は責任も取らなくて良いし、特に厳しい法も必要ないのです。

 

「呪術性のルール」によって、メディアの言っていることを無批判に信じ込み、異論をぶつけてくれば、「他人に迷惑をかけてもいいのか」と言われ、一般人や芸能人が意見を言えば、「専門家でもないくせに」と、「身分制のルール」が働いてしまう。

 

世間のルール、同調圧力が、すべて裏目に出ていると言っていいでしょう。

 

感想

あんまりまとまっていませんが、読んで思ったことを書いていきます。

反論に有無を言わさない空気が恐怖でしかない

コロナの例以外にも、

・大学に行け

・メイクしろ

・異性と結婚しろ

・子ども産め

・働け

・文句言うな

・税金払え

・休むな

などを「常識」として押しつけられる空気があります。

そしてそこから逸脱すると、「出る杭は打たれる」ように、「世間」から見放されたり、キワモノ扱いされたり、バッシングを受けたりするわけです。

また、反論しようとしても、「わがままだ」「最近の若いもんは」と、すべてはねのけられてしまいます。

私は、こういう空気が恐怖でしかありません。

同調圧力は「犯罪を減らす」が、、、

同調圧力は、「犯罪を減らす」「秩序を保つ」など良い面はありますが、「犯罪率が低いこと」は本当に良いことなのでしょうか?

 

犯罪が少ないのは、同調圧力が、治安の良い状態を保つために、逸脱が許されないからです。

 

でも、逆に言えば、起こされるべき紛争や、健全な逸脱者を同調圧力が抑圧しているとも言えます。

 

これは、大学一回生の時に、基礎演習のクラスで教授がおっしゃっていたことなんですが、紛争はある方が健全です。

 

紛争は、武力行使のケンカだけでなく、ちょっとしたケンカや、裁判や、色々な人間関係の摩擦を含みます。

 

生きていて、自分の権利、考えを主張していくことは必要であり、紛争はあって当たり前なんです。

 

例えば、最近行われているのは、「夫婦別姓訴訟」や「同性愛の結婚を法律で認めることを求める運動」です。

 

これも紛争の一つであり、ようやく表に出てきたという印象です。

 

しかし、そうはいっても「逸脱者」として扱われることが多く、テレビなどメディアでは全くと言って良いほど取り上げられません。存在するのに、亡き者として扱われるのです。

 

みんなキワモノであれ

 

世間の常識に縛られて、苦しい、生きづらいと感じている人は多いでしょう。

 

特にこのコロナ禍では、同調圧力の悪い面が一気に吹き出して、経済の悪化もあり、自殺者がかなり出ました。

 

私も実は、鬱状態になって、そういうことを考えたことがあります。

 

私はトランス・ヴェスタイトという話をしたことがありますが、「世間」の命令に負けて、型にハマろうと努力したこともあります。

女だけどかっこよくなりたい。「トランス・ヴェスタイト」とは?

 

しかしそんなことしたって、生きやすくなるわけがないんです。

 

上で取り上げ忘れたので、生きづらさを改善するための方法として、本に書かれていた内容を紹介します。

 

それは、できるだけ色々な世間を持つこと、できるだけ色々なコミュニティーに属することです。

 

例えば、学校や職場だけでなく、スポーツクラブに入ってみる、劇団に入ってみる、LGBTQ関連のコミュニティに属してみる、など。

 

こうすることによって、一つの世間に縛られることを防ぐことができ、少しばかり生きやすくなるのです。

 

まとめ

 

いかがでしたか?

 

この日本で生活することが息苦しいと感じていた人は、原因を知ったことで少し苦しさが軽減したのではないでしょうか?

 

早く、コロナに対する日本人の過剰反応が収まり、同調圧力が少しでも弱まることを願っています。

 

それでは。

 

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